チタン(Titanium: Ti)やHA(Hydroxyapatite)が骨結合性を示すことは、異論の介在する余地のないほど一般的常識として認識されている。しかし、インプラントが骨結合性を有する根拠としてこれまでに挙げられている報告は、主に病理組織学的観察と臨床的評価によるものがほとんどであり、素材の物理的?化学的特性を勘案した上での報告はなされていない。インプラントが長期に亘り骨内で安定して存在するには、骨との親和性と結合性が必須の条件であるが、素材に対する骨の反応を理論的に説明した報告は見当たらず、埋入後に生じる周囲骨の修復過程や変化についても選択的な条件下での報告がなされているのみである。
本書では主に基礎的分野からインプラントを全般的に検証し、素材の基礎的性状を理解した上で、各々の素材に対する骨の反応様式とインプラントに対する周囲骨の修復プロセスおよび骨結合性について解説する。