99号の特集は2つあります。1つは「Root Membrane Technique入門」として有賀正治先生(長野県)にRoot Membrane Techniqueの基本術式から即時プロビジョナルレストレーションの作製・装着までのチェアサイドにおける手順をステップごとに豊富な臨床写真を用いて詳細に解説していただきました。
有賀先生も著者の一人として弊社より7月に発行した書籍「Root Membrane Techniqueのすべて」でもRoot Membrane Techniqueの術式は解説していますが、模型中心の解説であるため、本特集の臨床写真による解説と併せて見ていただけるとよりわかりやすいのではないかと思います。
2つ目の特集は「究極の難症例 Eggshell sinus floor攻略法」として林揚春先生(東京都)に"卵の殻"のように薄い上顎洞底骨の上顎臼歯部に対するグラフトレスのインプラント埋入法(グラフトレスサイナスリフト)を解説していただきました。
Eggshell sinus floorは従来であればStaged approachのラテラルアプローチによるサイナスリフトが適応ですが、とても難易度が高く予知性に乏しいためインプラント治療による介入を躊躇するようなケースです。林先生が提唱するEggshell sinus floor攻略法も難易度は高いのですが、インプラントを埋入することによって上顎洞内のインプラント周囲に新生骨形成スペースを確保するというコンセプトなので、インプラントの初期固定に成功すれば1回の手術で短期間に終了する予知性の高い治療法だと思われます。薄い洞底骨を破壊してしまうなどのリスクもあり誰もが簡単にできる術式ではありませんが、書籍「ワイド・ショートインプラントの基礎と臨床 完全版(ゼニス出版 2023)」で紹介したグラフトレスサイナスリフトの延長線上にあるテクニックですので、量的に乏しい既存骨の利用法とエクストラワイド径インプラントの特徴を理解していくことで、通常のグラフトレスサイナスリフトと同様に応用可能な術式になっていくのではないかと考えています。