審美領域、特に上顎前歯部へのインプラント治療において薄い唇側骨板の吸収は抑止できないと思い込んでいる術者も少なくない。その結果、GBR やCTG ありきの治療計画が立てられ、患者は数回に及ぶ外科処置とそれに伴う治療期間の長期化に我慢を強いられてきた。
このような従来からスタンダードとされてきた治療プロトコルや常識とされてきたものを覆し、低侵襲で短期間のインプラント審美補綴を実現するGame changerとして登場したのがRoot Membrane Techniqueである。
本書はその基礎知識から臨床応用までのすべてを網羅した一冊である。
本書は唇側歯根片を抜歯窩内に残し唇側歯槽堤のボリュームや歯肉の質感を維持するRoot Membrane Techniqueを中心に審美領域における低侵襲・短期間のインプラント治療を解説しています。ただし、症例によっては健全な歯根や歯槽骨が残っていないためRoot Membrane Techniqueの対象とならない場合もあります。本書ではそのような場合も想定して、Root Membrane Techniqueが使用できない成熟側埋入や抜歯即時埋入についても、低侵襲で短期間、かつ審美性の高いインプラント治療の解説を加えています。 臼歯部へのインプラント治療を対象とした「ワイド・シュートインプラントの基礎と臨床 完全版」に続き、審美領域を対象とした本書の発行によって第5世代のインプラント治療のコンセプトとそれに基づくテクニックは全顎を網羅したといえます。患者が求めているインプラント治療は、これらのコンセプトとテクニックにすべて含まれていることは間違いありません。必ず今後の先生のインプラント臨床の一助になるものと確信しております。