上顎臼歯部へのインプラント治療は多くのケースで垂直的骨量に乏しく、何らかの造骨処置が必要でした。その結果、外科処置の回数や感染のリスクが増え、治療期間が長期化するというのがインプラント治療の難点でした。完全版では「感染の原因の一つは骨補填材にある」というエビデンスに基づいた、エクストラワイドのショートインプラントを用いた骨補填材を使用しない上顎洞底挙上「グラフトレスサイナスリフト」についても、新たな知見や新症例を加えて詳しく解説しています。また、上下顎臼歯部を問わず骨造成を行わないインプラント治療は感染のリスクも低く、低侵襲で短期間の治療が実践できます。
本書は、術者のストレスを軽減するとともに、患者が求めるインプラント治療を実践するための最新のエビデンスに裏付けられた基礎知識と、より豊富な最新臨床情報で再編集されたComplete Editionです。
本書は、2021年4月に発行した「ワイド・ショートインプラントの基礎と臨床 第5世代のインプラント治療」が二刷を経て完売したことに伴い、訂正や変更箇所を確認して三刷として増刷する予定でしたが、著者らの意向により大幅な変更や追加が加えられため「完全版」という新刊として発行に至りました。
普遍的なエビデンス部分に大きな変更はありませんが、新たなエビデンスの追加や、症例に関しては最新のコンセプトに基づいたものに変更され、追加された症例も多く、100ページ近いボリュームがアップしています。
主な変更箇所は上顎臼歯部における上顎洞底挙上で、著者らの最新のコンセプトである骨補填材をまったく使用しないグラフトレスサイナスリフトが主軸となり、垂直的残存骨量が3mm以下の上顎臼歯部に対するグラフトレスサイナスリフトの術式や、骨補填材を使用しなくとも上顎洞底挙上部位に骨が新生される理論的背景などが詳しく解説されています。
以前の「ワイド・ショートインプラントの基礎と臨床」を購読された先生であっても、また違った書籍として新たなコンセプトや術式、臨床が学べる一冊になっています。