89号の特集テーマは林 揚春先生(東京都)によるDecoronation「アンキローシスした歯へのインプラント処置」です。
アンキローシスを起こした歯(歯根)は骨リモデリングの機序に組み込まれ骨への置換性吸収が始まっています。つまり、侵襲が大きく操作が困難な抜歯を行わなくても将来的には骨に置換されていきます。ただし、歯根部を骨内に残すための処置については留意すべき点もあり、それが1984年に報告されたDecoronationというテクニックです。
特集では、このDecoronationについてのエビデンスを示した上で、臨床応用について症例を提示しながら解説しています。歯根膜が喪失してアンキローシスを起こした歯根への処置がDecoronationであり、歯根膜を有した歯根部を骨内に残すのがルートメンブレンテクニックということになります。今号では、リレー連載である「即時荷重・即時プロビジョナリゼーションのすすめ」の15回目として川添 祐亮先生(広島県)が、「上顎前歯部インプラント治療 抜歯即時埋入とルートメンブレンテクニックの適応症を考える」と題してルートメンブレンテクニックを応用する上での考え方や注意点を解説してくださっていますので、特集とリンクさせて読んでいただけるとさらに理解が深まるかと思います。
また、今号からの連載として咬合をテーマにした「咬合を紐解く」が始まりました。
第1回は咬合の診断について、その方法論や実践法を解説しています。様々な考え方が存在する咬合理論ですが、高度な審美性も求められるようになった近年の歯科治療において、顎運動や咬合誘導などの理論に加え、審美性というキーワードも踏まえながら咬合というものを紐解く知見や情報が提供できればと考えています。
今号より誌面サイズを従来のレターサイズ(幅214mm×縦280mm)から通常のA4変形サイズ(幅210mm×縦280mm)に変更しました。それに伴い本文および図説の文字サイズも少し大きくして読みやすくしてみました。今後とも本誌をよろしくお願いいたします。