90号の特集テーマは林 揚春先生(東京都)による「即時荷重インプラントの原理原則」です。
即時荷重インプラントといえばAll-on-4をイメージされる先生方も多いと思われます。インプラントを埋入したその日に上部構造が装着されるというコンセプトは、患者さんにとってはとても魅力的な治療法だと感じたことでしょうし、実際にAll-on-4をインプラント治療の中核に据えた歯科医院も多く存在していました。インプラントの埋入と同時に歯冠部までが再現されるという治療法は、それだけ患者さんに望まれているという証にもなったのではないでしょうか。
ただし、All-on-4のコンセプトは基本的にフルマウスの口腔機能再建で、天然歯との共存を考えた即時荷重インプラントではありません。無歯顎の患者さんは別として、今患者さんが求めているインプラント治療というのは、残存する天然歯と共存しながら埋入と同時に上部構造が装着される即時荷重インプラントなのではないでしょうか。
しかし、どんな症例に対しても即時荷重が可能というわけではありません。そこには一定の条件やルールが存在します。条件を満たさない症例やルールを無視した術式では即時荷重はできません。これまで即時荷重の条件といえば、インプラント埋入時の埋入トルク値が可否の判断基準になっていましたが、埋入トルク値だけでは判断基準として弱いこともわかってきています。
本特集では、即時荷重を実践するためのエビデンスに裏付けされた原理原則を症例を踏まえて解説しています。何が何でも即時荷重を実践すべきといっているわけではありません。科学的な判断の下に即時荷重を目指すことで、即時荷重ができなかったとしても、インテグレーション獲得までの期間や上部構造装着の時期が高い確率で予測できるようになり、従来の上顎と下顎に分けた曖昧な治癒期間から解放されることになります。それによって最も恩恵を受けるのが患者さんであると考えています。