インプラントジャーナル IMPLANT JOURNAL
91号

価格
4,730円(本体4,300円+税10%)
体裁
A4変形
IMPLANT JOURNAL

特集

垂直骨量1~2mmのグラフトレス サイナスリフト-意図的穿孔による上顎洞底挙上-
[ 林 揚春 ]
洞粘膜の穿孔が副鼻腔炎を引き起こすという明確なエビデンスはなく、実際には骨補填材の使用が副鼻腔炎を惹起する原因だという指摘もある。その根拠を文献と症例を通して説明する。

内容

  • デジタルデンティストリーの現在 最新デジタル技術vs歯科技工士の匠の技 前編 最新のCAD/CAMシステムを応用したインプラント治療 [ 鈴木 光雄 ]
  • 咬合の科学 シリーズ連載 咬合を紐解く 第3回 咬合力に対する骨の反応 [ 吉野 晃 + 船木 弘 + 佐野 匡哉 ]
  • Scientific illustration イラストで見るがん [ 井上 孝 ]
  • 連載 経時的な骨の変化に対応するために 超高齢社会に対応できるインプラントシステムを目指して 第4回 無歯顎・多数歯欠損症例へのITインプラントの応用 [ 飯島 俊一 ]
  • リレー連載 即時荷重・即時プロビジョナリゼーションのすすめ (17) 抜歯後早期埋入を選択した即時荷重・早期荷重インプラント治療 [ 有賀 正治 ]

編集部より

91号の特集テーマは林 揚春先生(東京都)による「垂直骨量1〜2mmのグラフトレス サイナスリフト –意図的穿孔による上顎洞底挙上–」です。
意図的穿孔と聞くと、上顎洞底粘膜を破ってインプラントを埋入するというイメージを抱く読者も多いかも知れませんが、決してそうではありません。上顎洞粘膜を傷つけずに挙上できることが前提であることには変わりありません。この術式のポイントは2つです。まず、上顎洞底粘膜が破れたとしても、それが原因で副鼻腔炎を引き起こすというエビデンスはないこと、骨補填材の使用が副鼻腔炎を引き起こすリスクを高めているということです。
これらの根拠に基づいて、これまでの少ない垂直骨量への上顎洞底挙上術を検証すると、多くのリスクが存在していることがわかります。また、洞粘膜が破れても副鼻腔炎を引き起こす原因にはならないとはいいましたが、やはり許容できる程度はあります。そこに従来のように骨補填材が填入されると洞粘膜裂開部から骨補填材が上顎洞内に漏出する危険性も伴い、副鼻腔炎を引き起こすリスクはかなり高くなります。
ここでいう意図的穿孔とは、基本的に上顎洞底骨が対象で、それによって洞底粘膜に小さな穴が開いたとしても、その小さな穴のサイズをできるだけ維持しながら残存骨ごと洞底部を必要最小限に挙上し、ワイドショートインプラントを埋入して上顎洞内への侵入量を抑え、上顎洞と口腔内の交通を遮断することで穿孔した洞粘膜は早期に治癒すると考えられます。術式を複雑にして洞粘膜に大きな裂開を生じさせてしまうくらいなら、シンプルな術式で洞粘膜のダメージを最小限に抑えて治癒を早めるという考え方です。骨補填材は使用しないので洞粘膜の治癒を妨げる要素もありません。ただし、術式の基幹となる多くのエビデンスについては正しく理解しておく必要がありますので、内容をしっかりと読み込んでいただくことをお願いしたいと思います。本文中ではイラストも多用して解説しています。