92号の特集テーマは林 揚春先生(東京都)による「インプラント補綴における連結か非連結かの判断基準」です。
上下顎臼歯部、とくに大臼歯が欠損した症例に対して連続した2本のインプラントを埋入した場合、上部構造は連結することが大前提とされているように感じています。しかし、患者自身の術後の口腔ケアなどを考慮した場合、非連結の単冠で処置した方が清掃性や口腔衛生管理面で優れた結果が得られるケースも多く存在します。
連続する臼歯部インプラントの上部構造は連結するという考えの明確な根拠は曖昧です。おそらく大きな咬合力を支持するためには上部構造を連結して、咬合力を下部構造であるインプラントに均等に分散したいと漠然とイメージしたからではないかと思われますが、すべてのケースで連結が必要とする根拠としては説得力に乏しいと考えます。
特集では、インプラントに加わる力のリスクを従来のクラウン/インプラント比ではなく、Mischらが2006年に報告したCrown-Height Spaceの概念に基づいて、プラットフォームスイッチングタイプのワイドあるいはエクストラワイド・ショートインプラントの臨床的有用性を、エビデンスベースで臨床応用するうえでのリスク管理の指標を示し、連結か非連結かの基準を提示されています。なぜ連結するのか、連結しないのかという生体力学的に曖昧であった根拠に対して、明確な一つの基準が理解できます。今後、インプラントの補綴設計を計画するうえでも、大いに役立つ情報が満載ですので、是非一読いただければと思います。