93号の特集タイトルは「骨造成やサイナスリフトはもう古い 最新インプラント治療はこれだ!」という少し過激なものですが、誤解のないようにいいますと、これらのテーマを決定したのは編集部であり、各執筆者の先生方の意向ではありません。もちろん骨造成や上顎洞底挙上術などが必要となる患者さんはいると思われますが、あえてこのテーマにしたのは、それら骨量の乏しい患者さんのために低侵襲で短期間治療ができる新たな発想を提案したかったからです。
インプラント治療の登場によって欠損補綴の治療は大きく変化し、保存の考え方にまで影響を及ぼすようになってきました。今やインプラント治療は多くの国民に認知され、求められる治療になってきています。しかし、一方で患者さんがインプラント治療を躊躇する理由は、その治療期間の長さです。オッセオインテグレーテッド・インプラントが臨床に登場してから半世紀ほどが経過しますが、インプラントシステムや各種診査・検査装置の発達に比べて、治療期間については当初からさほど短縮されていないように感じています。この原因はインプラント治療だけが古いエビデンスを継承し続けているからではないでしょうか。
今号の特集によって実際の臨床結果というエビデンスをより多くの先生方に見て読んでいただき、治療期間や併用外科処置において低侵襲で短期間治療という意識が少しでも生じていただければと思っています。今回は上顎臼歯部が対象でしたが、今後は審美領域などのインプラント治療においても患者さんの日々の生活というものを最大限考慮したインプラント治療の情報発信を行っていきたいと思っています。