前号(93号)の特集テーマは「骨造成やサイナスリフトはもう古い 最新インプラント治療はこれだ!」に続き、今号のテーマは「GBRやCTGはもういらない 最新インプラント審美補綴はこれだ!」とし、林 揚春先生(東京都)から「4S-conceptに基づいた審美領域のインプラント治療」という内容を執筆いただきました。
今号はあえてこのテーマにしましたが、決してGBRやCTGを否定しているわけではありません。これらの処置が必要な症例があることも理解しています。一方で、審美領域のインプラント治療においてはGBRやCTGがルーティンの処置と考えられている傾向があり、ひいてはGBRやCTGありきのインプラント治療計画があたかも審美性を考慮した治療計画であるかのような風潮に少し違和感を覚えることもあります。前号の本欄でも述べましたが、今やインプラント治療は多くの国民に認知され、求められる治療になってきています。しかし、一方で患者さんがインプラント治療を躊躇する理由は、その治療期間の長さです。GBRやCTGありきのインプラント治療は外科処置の回数も多くなり、当然のことながら治療期間も長くなります。できることならばGBRやCTGを避けたインプラント審美補綴を実践したいという先生方も多いのではないでしょうか。
本特集では、従来なら何の疑いもなくGBRやCTGの適用症例とされていた審美補綴のケースが、インプラントのポジショニングと補綴形態のみで審美的に何ら問題のない治療結果を得られている症例を多く提示しています。つまり、症例によってはGBRやCTGは必要ない場合も多いことが理解できると思います。ありきで行われてきたGBRやCTGは、エステティックではなくコスメティックに近い処置なのではないでしょうか。インプラント審美補綴で重要なのは、生体の生理的な治癒のメカニズムを最大限に利用することで、自然な美しさを備えた治癒形態を導きさせるか否かを治療計画の段階で判断、あるいは予測することだと思います。今号の特集がそれらの判断や治癒形態の予測における一つの基準となり、歯科医そして患者さん双方に利益のある低侵襲で短期間のインプラント審美補綴への道しるべになればと願っています。