93号からの特集は、従来の術式に対して「もう古い!」「もういらない!」をテーマに展開してきました。本号では、最後のシリーズテーマとして「骨移植や大規模骨造成はやりたくない 4S-conceptに基づいた低侵襲インプラント治療はこれだ!」を掲げ、林 揚春先生(東京都)から「萎縮した歯槽堤に対する低侵襲・短期間のインプラント治療」という内容を執筆いただきました。
「もう古い!」「もういらない!」「やりたくない!」と少し過激な表現を続けてきたのは、インプラント治療がさらに普及して国民の健康を維持・促進するためのネックとなるのが、多くの外科処置を併用した長期に及ぶ治療であると考えられるからです。患者が求めるのは複雑な処置を多用した長期間の治療ではなく、シンプルで外科的侵襲の少ない(痛くない)短期間の治療であることは間違いありません。93号から続いた特集が、「本当(真)の患者目線のインプラント治療とは何か?」を考えるきっかけになっていただければと思っています。
話題は少し変わりますが、本号でシリーズ連載中の「咬合を紐解く 第7回 欠損補綴としてのインプラント」の誌面に自家歯牙移植の症例が含まれています。また、「効率的で予知性のある歯の移植法」では春日 太一先生(東京都)が最新のデジタル技術を駆使した確実で効率的な自家歯牙移植法を報告されています。自家歯牙移植は移植歯が生着しても、経時的に置換性吸収によって移植歯を喪失するというリスクがありますが、置換性吸収が起こったとしても歯根が骨に置き換わるだけで骨組織は残ります。いわゆる機能を維持した状態の長期的で安全なリッジプリザベーションとも考えられます。患者が若年者で口腔内に移植歯の候補が存在する場合は、将来のインプラント治療を見据えての中継ぎ処置として自家歯牙移植を選択するのも有用のように思われます。デジタル技術が進化を続ける現在、自家歯牙移植もシステマティックに行えるようになってきていますので、本誌の内容が参考になれば幸いです。