96号の特集は、高齢者へのインプラント治療をテーマにしました。
高齢者というとどうしても有病者であるとか、全身管理がどうの、要介護や寝たきりになった場合はというネガティブな話になりがちですが、現実には元気に生活している高齢の方がたくさんいます。ただ、歯の寿命が高齢化に追いついていないのか、不健康になっていく原因の一つが口腔機能の低下であることは間違いありません。
このように寿命を迎えた歯の代替を担ってくれるのがインプラントであり、高い機能性と審美性とともにブリッジや義歯にはない組織保護性も併せ持っています。
このように考えると、むしろ高齢者だからこそインプラント治療が推奨されるように思います。そして、そこに求められるのは、治療中の患者のQOLを低下させることのない、シンプルで外科的侵襲の少ない(痛くない)短期間の治療です。
本特集では、高齢の患者に対するインプラント治療の実践に焦点をあてて、豊富な臨床例を示しながら実際の治療計画や治療方法などを考え方も含め詳細を解説していますので、患者の高齢化が進む今後のインプラント臨床に活かしていただければ幸いです。
また、本号でシリーズ連載中の「咬合を紐解く」が今回の「第8回 インプラントによる咬合再構成 -インプラント治療の未来と課題-」をもって連載最終回となります。2年間にわたり咬合という難解なテーマに取り組んできた連載ですが、今後は第1回~第8回の内容をリメイクして一冊の成書にする予定ですのでご期待ください。